消防設備士とは消防設備等の設置工事、維持管理の点検整備を行うことができる資格です。
消防設備を取り扱う工事業者の方が消防設備士を取得することが多いのですが
今回はその消防設備士という資格が、いかに建築士である設計者や設備専門の設計者である設備設計者にとって重要であるかを解説していきます。
・意匠を担当する建築士、設計者1〜3年生
・今更周りに聞けないベテラン建築士、設計者
・設備専門の担当の建築士、設備設計者1〜3年目
・設計者で、消防設備について分からなく苦労している方
それでは早速解説に入っていきます。
設計業務において消防設備士は法的に必要?
初めに申し上げておきますが、消防設備士という資格は
法的には設備設計、建築設備の業務においては直接は関係がありません。
法的に必要が無ければ取得する必要もないし、資格勉強にかかる費用や資格更新講習も定期的に行われる為、時間と金銭的に労力がかかります。
なので大半の建築士や建築設計者、設備設計者は取得していないことが多いです。
ですが建築士、特に建築設備の設備設計者にとって消防設備士は必要性が高いと現役設備設計者の私は感じています。
その理由は沢山メリットがあるからです。
そのメリットを一つずつ解説していきます。
そもそも消防設備とは?

スプリンクラーや屋内消火栓などの1次消火、自動火災報知設備や非常放送などの警報関係、連結送水設備のような2次消火や誘導灯や避難器具などが連想されます。
建物や用途によって必要な消防設備は変わり、それぞれに消防法、または火災予防条例に基づく消防設備の設置基準が存在します。
消防設備機器それぞれの機能については参考に、各消火設備機器を簡単にまとめてくれている日本消防検定協会のサイトを貼っておきます。
建築士は消防設備の何を勉強すれば良いのか?
そもそも建築士、設計者は消防設備の何を勉強すれば良いのでしょうか?
私は、建築士や設計者が消防設備士は勉強して取得したほうが良いという前提で話をしていますが、逆に消防設備士を取得していない設計者の場合として、一例を挙げてみました。
大学など学校で習ったり、建築士や建築設備士などの資格勉強で少し勉強することになりますが、それぞれの設置基準については丁寧に勉強していない方が多いのが現状です。
そうなると、客先への建物スペックの説明や消防設備のスペース検討、消防協議などがなかなか上手くいきません。
意匠設計を担当する建築士、設計者の方
各消防設備については、設備設計者に任せて勉強しなくても良いと考える方が多いのですが、それでも建物の用途別にどのような消防設備が必要かは覚えて置いて損はありません。
むしろ建物用途別に必要な消防設備を理解していないと、面積やスペースを確保しながら良いデザインを考えた設計は難しいと考えます。
意匠専門の建築士、設計者は消防設備について、最低でも建物用途別の必要消防設備を覚えるようにしましょう。
設備を専門とする建築士、設備設計者の方
建物用途別の必要な消防設備の他に前述した各消防設備の設置基準まで把握しておくことが必要ですので、消防設備士の資格勉強は特に重要です。
設備専門とする建築士、設備設計者は、建物用途別の必要消防設備、そして各消防設備の設置基準を理解しましょう。
言わば、設備設計者は消防設備を含めた設備のスペシャリストになるべきなのです。
各消防設備士の取得する順番や電気設備、機械設備の業種に分けた順番などを以下の記事で書いていますので、参考にしてみてください↓↓
建築士が消防設備士を取得するメリット

ここから実際に、意匠や設備の建築士、設備専門の設備設計者それぞれが消防設備士を取得する必要性、メリットを紹介していきます。
事業者へのプレゼンの幅が広がる
消防設備士では、各消防設備機器の知識だけでなく、消防法に関係する防火対象物の知識を身につける必要があります。
いわゆる建物用途別に必要な消防設備の内容などもこれに該当します。
例えば事業者とのこういった会話があるとします。

事務所と店舗の複合用途(16項イ)の計画があるのですが、複合用途にするか店舗の面積を減らして事務所用途とするか迷っています、それぞれのメリットデメリットを教えてください。

複合用途と事務所用途ではこのように消防設備が違い、コストも差がでます。
これくらいであれば、建築設備の建築士、設備設計者などに聞けば分かる範囲です。
しかしこれが、消防設備士を取得する為にきちんと勉強しておけば

消防設備、コストの違いの他に消防法が改正された場合、複合用途(16項イ)の場合、改正法令を適用する必要があります。
と言った消防法的な目線でもアドバイスができるようになります。
それだけでも建築士や設計者に対する事業者の印象は違いますよね。
難易度が比較的優しく受験資格も軽い

消防設備士の試験は比較的優しいので、難関と言われる1級建築士や技術士、電気主任技術者、建築設備士の受験資格を得られるまでに少しの勉強で取得できますので
設計者、建築士としての長いキャリアの中の隙間時間に勉強するには丁度良い難易度であり、勉強内容です。
消防設備士の試験の合格率は受験する種類にもよりますがおよそ20%以上はあり、30%近くに達することもあります。
勉強時間も2〜3ヶ月、効率良く勉強できる方は1ヶ月以内でも合格することができます。
消防法に詳しくなり、かつ比較的簡単にライセンスも取得できるのは一石二鳥だと思いますよ。
資格更新講習がある
消防設備士には定期的に、資格更新講習があります。
メリットとして講習があることを挙げていますが、これは私の経験談でもあります。
どんなに経験を積んでも普段の建築設備、設計業務に不必要な知識はどんどん剥がれ落ちてしまいます。
それを定期的に講習を受けることによって、知識の復習ができます。
自発的に復習することは難しくても法的に講習を受講する必要があるので、会社にも公に時間を作ってもらうことができますし、その場できちんと復習すれば、また消防設備の知識として再度勉強することができます。
そうして、設計者、建築士として消防設備の知識をどんどん蓄えて、より良い設計が行えるので、そういった意味でも消防設備士を取得した方が良いです。
設備設計者が消防設備士を取得した方が良い理由
ここからは建築士の中でも建築設備に特化した設備設計者が消防設備士を取得することについて解説します。
消防設備の知識を深められる
当然の事ですが、消防設備についての知識を深められます。
どのような建物の設備設計を行なっているかによりますが、大半は屋内消火栓、スプリンクラー、警報設備関連が主流になると思います。
私は仕事上、泡消火を扱う機会が上記設備よりは少ないので、たまに聞かれると自分で勉強した知識が剥がれ落ちていることに気付きます。
特に設備専門の建築士、設備設計者については、重要な事です。
そういった時に前述したように消防設備士の資格更新講習を受講することで再度勉強し直す事もできます。
勉強した知識は一生ものにしましょう!
年収UPや昇級UPの要因となる

こちらも設備設計者でしたらお分かりでしょうが、消防設備士を取得し、上司に報告することで評価の対象となります。
ちなみに私は消防設備士 甲種1・2・3・4類を取得していますが、会社として資格手当が出るのは建築士系の資格しかありません。
ただ、若手の頃に同僚と切磋琢磨しながら仕事をしている中、同僚は消防設備士を取得しておらず、結果的に私の方が早く出世することになりました。
後から定年退職された上司に聞きましたが、資格の数はやはり設備設計者としても建築士としても評価されるべき点なので評価は上げておいた、とのことでした。
手当がなく、目に見えない評価でしたが付加価値要素として有り難く感じました。
おまけ:区画形成を消防法目線で深めよう
こちらは消防設備士には直接的には関係ありませんが、消防法、建築基準法についての区画の考え方について、苦労している建築士、設計者をよく見かけますので、おまけとして解説します。
消防法や建築基準法に関係する区画の種類は様々です。
令8区画や13条区画などは特に注意が必要ですが、建築士としての知識だけでなく消防法としての区画の目線も持つことが重要です。
区画については「用途別 消防設備設置基準」という書籍が非常に分かりやすく書かれていますので、オススメです。
まとめ
消防設備士を建築士や設備設計者が取得するメリット
・事業者に対しての提案内容の幅が広がる
結果、良い印象を与え信頼してくれます。
建物用途別の消防設備を理解して、より良いデザインでかつ法的な事象をクリアした設計者になりましょう。
・消防設備の知識を得られて、かつ資格更新講習で復習という形で定期的に勉強できる。
勉強で培った知識は一生ものにしましょう、設計者、建築士としての長いキャリアの道すがら、消防設備について集中的に勉強する時間があっても良いのではないでしょうか?
・設備設計者として建築士としての価値が上がり、結果年収や昇級UPの対象となる。
私の例を出していますが、ライセンスを取得している人間は私も信頼していますし、目に見えない評価対象ですが、信頼される建築士、設計者になりましょう。
そうすれば、対価は後からついてきます。
以上です。
設備設計者、建築士にとって消防設備士は私はとても重要だと考えて、部下にもそう教えています。
消防法を理解できる建築士、設計者になりましょう!
pinky
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