【現役設備設計者が解説】設備設計、建築設備設計の1日を紹介

設備設計者について

現役で建築設備設計、設備設計のお仕事をしているpinkyと申します。
建築設備設計の魅力をお伝えする為、ブログを運営していまして、
建築設備設計の体験談として、実際の私の1日も紹介しています。

今回は建築設備設計、設備設計のお仕事の中でもかなりきつい、激務だった1日にクローズアップして紹介していきます。

そんな日もある、ということを認識してほしい為です。
ですが間違ってもこのような1日が全てではないことを前提にお読みください。

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近年の設備設計、建築設備設計業界の働き方改革とやりがい

近年、働き方改革により仕事に対する拘束時間、勤務時間の見直しを実施されている会社も沢山あります。
中には残業1時間までと決めて、それ以降はパソコンを全く触れないようにしていたり、定時で必ず退社する日を設けていたり、様々な企業努力をされている会社があります。

ですが、それでも建築設備、設備設計のお仕事は技術職なのですから、ずっと定時で帰れるようなお仕事出はありません。
それほど学び、時間をかけて設計することもまた、設備設計、建築設備設計というお仕事の醍醐味でもあります。

もちろん、プライベートを全て犠牲にしたブラックだと呼ばれるような働き方はどのお仕事でも間違っていると私は考えています。

ただ、それでも設備設計のお仕事はある程度は、どうしても激務になってしまう1日があることを知って欲しくて記事にしました。

建築設備設計と設備設計の違い

先ずは、本記事に関する設備設計や建築設備設計の建築設備設計の定義をご説明します。
端的には、建築設備設計と設備設計の意味合いはほとんど変わりません。

建物用途としては
ハコモノと言われる施設系のビルや店舗、事務所や集合住宅から医療施設や学校系もあれば、
工業用の工場やインフラ設備に対する設備設計を行う者を設備設計者と呼びます。

取り扱う分野は
給排水衛生設備や空気調和設備、ガス設備、消火設備を取りまとめる機械設備設計もあれば、
受変電設備から電灯、動力設備、インターネットやテレビなどの弱電設備を取り扱う電気設備設計もあります。

取り扱う分野別に機械設備設計者や電気設備設計などと呼ぶこともありますが、
本題の建築設備設計と設備設計の違いについては厳密には建物用途にあります。

設備設計はインフラ設備なども踏まえて建物問わず設備に関連する設計を行うことであり
そして、建築設備設計はハコモノと言われる建物の設備設計に該当すると定義します。


その追加根拠として、建築設備士という資格がありますが
建築設備士の試験問題に出てくる内容は、ほぼハコモノの設備設計に関係する内容ばかりで構成されています。

以上のことから、設備設計と建築設備設計の違いはこのように定義しておきます。

設備設計
特殊な建物なども問わずインフラも含めた設備に関する設計

建築設備設計
ハコモノ系の設備に関する設計

冒頭が長くなりましたが、それでは建築設備設計いわゆるハコモノの設備設計業務の1日を紹介していきます。

私が要所要所で業務内容の詳細や解説を行います。
よろしくお願いします!

1日のタイムスケジュール

今回の1日の設定は下記になります。

・実施図面の提出5日前の物件が1つ

・基本設計の提出1週間前の物件が1つ

・監理業務の物件は着工して1ヶ月

1日の行動を分かりやすくするために円グラフを作成してみました。

この1日は体力的にきつい1日だったと言えるでしょう。

設備設計業務は、意匠設計と違い、一人の設備設計者が複数の物件を抱えることはよくあります。

そして、その複数の物件で事業者へ資料を提出する納期が重なってしまう事もよく起こります。
加えて、現場監理の物件は着工してすぐは地中梁スリーブの確認、計画書や施工要領書の確認などで非常に忙しい業務の時期が重なることもこれまたよく起こります。

今回はそんな、設計物件でも監理物件でも忙しい時期が重なってしまった1日です。

午前中〜正午

今日の午後からは、私が設備設計として設計業務を担当した工事中の物件の会議及び、定例後に施工図確認会があります。
工事中の物件に対して、建築士としての監理業務を担当している私は定例会議にも出席します。
定例会議などは時間的に拘束時間が長いので、午前中にできるだけ自分の作業に集中します。

午前中の作業は、設備設計図を事業主に提出する為の最終段階の業務です。

実施図面提出5日前となると、提出予定の機械設備図も電気設備図もほとんど完成に近い状態で、上司や意匠、構造担当から設備図面に対しての図面修正や調整事項が上がっており、その修正内容や事業者へ提出する資料の準備などに追われています。

設備設計者は設備図の他に以下のような資料を提出します。

・設備に関する根拠となる計算書

・事業者の仕様や必要提出物に対してのチェックリスト

・工事上の留意点などのまとめ資料

※その他、積算業務などがある場合は、工事費用に対する内訳明細書など

今回の物件はオフィスビルの設計で、設備に関する根拠となる計算書の提出用資料の作成です。

電気設備は自家用受変電設備の変圧器の容量、非常用発電機の容量、各オフィスに対する幹線の計算書からインターネットやテレビの出力計算書などを提出します。

機械設備は受水槽の容量や給水引き込みの計算書から、排水の定常流量法による排水計算書、換気計算や加湿量の計算、また空調負荷算定書、そして設備機器の騒音計算書を提出します。

設備設計においては、配管配線の材質、ルート、サイズなど何事も根拠があっての設備設計ですので、当然と言えば当然の業務内容ですよね。
そこが設備設計、建築設備設計の面白さでもあります。

必死で作業するも、12時も回ってしまいましたので、午後からの現場定例の為、切り上げて移動することにしました。

午後〜現場定例、および設備の分科会

現場の最寄り駅から現場まで歩きながらコンビニで購入したおにぎりを食べながら現場へ向かいます。
忙しい1日の昼食はこのように時間短縮を計るしかありません。

現場に到着し、施工者開催による定例会議が始まります。

今回は着工して1ヶ月が経とうとしている有料老人ホームの物件です。
工程説明や現場の進捗を伺いながら、事業者を交えて進捗や施工管理箇所で気になった箇所などの質疑事項を発言して、情報の把握及び関係者に対しての共有などを行います。

定例会議も終わった所で、次は設備の施工管理担当の方と地中梁スリーブや配管配線図面の確認会として、設備分科会が始まります。

工事中の物件に対しては、この時期の打ち合わせは大変重要でしてでして、
スリーブ図や施工図を施工者から初めて提出頂き、施工計画書や施工要領書と並行して確認しながらチェックを進めていきます。

この時期と設計物件の大切な時期が重なる今日みたいな一日は、設備設計の仕事において本当にきついです。

ですが、自分が設計した設備内容を建物に反映させる為の重要な業務なので、ここにはやりがいも感じたりしますので、精神面では結構楽しかったりするものです。

施工者との打合せは長時間続くこともあり、今回は地中梁スリーブという大事な打合せなので丁寧に一つずつ施工者や意匠設計を交えてチェックしていきます。

この日は現場定例と設備分科会で合計6時間もかかりました。
このようなケースも良くあります。
大事な時期なので仕方ありませんよね。

帰社~終電近くまで

早足で会社に戻り、午前中に残してしまった実施設計に向けての提出資料の残り作業を開始します。

帰社途中にコンビニに寄り、夜食を購入しました・・・・
ビールを飲みたい衝動に襲われますが、我慢してカップ麺とおにぎりを購入しました。

デスクに戻ると、夜食を食べながら次の仕事の段取りをします。
終電まで残り数時間、あとひと踏ん張り・・・

夜食を食べ終えてからは、基本設計提出資料の作業を開始します。
今回の基本設計で提出するのは商業施設です。

商業施設はテナントがC工事(竣工後の工事)で入るので、どのようなテナントを募集するか事業計画を見ながら電気容量や空調設備の計画を行います。

ここでの仕事内容は、設備図面をしっかり書くのではなく、各テナント容量に見合う受変電設備や給排水計画、省エネに配慮した負荷計算を行った空気調和設備、必要消火設備の計画などを計画概要書と根拠となる計算書を作成していきます。

それと同時にテナント別の電気容量の提案や、事業者から要望のあった太陽光設備の導入、災害などの有事の際の設備機器、システムの提案資料も作成します。

深夜の作業ではなかなかハードな仕事内容です。
そして体力的にもきつく感じる時間ですが、これまたこの事業者への設備提案などが非常に楽しいのです。

昨今、設備設計や建築設備設計のお仕事は省エネや脱炭素などの観点で、事業者、不動産会社からの要望も非常に多く、注目の的となることが多いです。

ZEBやZEH、脱炭素の補助金の観点も相まって、慢性的な人手不足にある設備設計業界ですが、社会的には非常に重宝されるようになってきています。

そうったら観点から、物件の初期の設計段階である基本設計の時期の設備設計業務は、事業計画の基盤となりますので、慎重に業務を行う必要があります。

事業計画に対する提案資料、事業者の要望事項に対する設備概要などが9割ほど完成したところで、本日の業務は終了することにしました。
あとは最終チェックと数日後に予定されている社内会議での調整事項、といったところでしょうか。

1日を終えて

案の定、終電ギリギリまでの作業でしたので、自宅に着いたのは翌日1時前でした。

速攻お風呂を沸かして、ゆっくり湯舟に浸かって激務な1日の疲れを取ります。
きつい1日でしたが充実感はあった1日です。

同僚とゆっくり話す機会も無く、食事もゆっくり摂ることもできない1日でした・・・
たまには、こんな日もあります。

このような1日が毎日続くわけではありませんが、このような1日が存在することも確かです。
設備設計、建築設備設計のお仕事もまた、顧客があっての仕事ですから、忙しい時は忙しいというのは当然ですよね。

冒頭にて解説しましたが、建設業界も働き方改革が進んではいますが、それでも中にはこのように激務な1日もあるのは事実です。
少し前までは建設現場の「3K」(きつい、汚い、危険)と呼ばれマイナスイメージが強かったですが、建設の設計業界も今回ご紹介したように、きつい仕事である時もあります。

ですが、間違いなく一昔前に比べれば、プライベートを全て犠牲にした「ブラック」だと言われるような働き方は少なくなってきています。
今回紹介した1日もあくまで1日ですから、これが1週間の内、何日も続くわけではありません。

私はこんな色んな毎日の中、やりがいは人それぞれ感じる所は違いますが、建築設備の設計を行っていて、総合的にはやはりこの仕事は楽しいと感じています。

今度も包み隠さず、設備設計全般に、建築設備設計業階の内容を紹介していきますので、誰かの何かのお役に立てると幸いです。

pinky


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