建物を設計する際に行う消防局との協議はどのような方法なのでしょうか?
消防協議は設計業務において非常に重要な業務の一つです。
うっかり協議し忘れて工事が着工してから指摘されるケースが少なくありません。
設計事務所に勤務する現役設備設計者が消防設備について、消防局と協議する手順を紹介していきます。
・消防法、施行令、施行規則、火災予防条例の位置づけが分かる
・消火設備について消防局との協議方法、手順が分かる
・消防協議において大事な事が分かり、設計ミスを未然に防げるようになる
・消防設備の消防協議において学ぶべき本が分かる
それでは早速本題に入っていきます。
消防法や火災予防条例の法体系を理解しよう
消防協議を行う前に、そもそもの話ですが、消防法と火災予防条例の違いはご存じでしょうか?
それを説明するには法体系からの説明になりますが、ざっと説明しますと以下のようになります。
消防に関する法令は、消防法の他に、消防法施行令、消防法施行規則があります。
この3形態は消防法に限らず以下のような意味合いになります。
法 = 法律 = 国が定める法
施行令 = 政令 = 政府が定める法
施行規則 = 省令 = 各省で定める法
法 > 施行令 > 施行規則
そして、消防法関係も同様となります。
消防法 = 法律
消防法施行令 = 政令
消防法施行規則 = 省令
消防法 > 消防法施行令 > 消防法施行規則
では火災予防条例とはどのような位置づけなのでしょうか?
「条例」というのは、国が定める法の範囲内で各市町村が定める法なのです。
これを消防法と火災予防条例に当てはめると、以下のようになります。
ここは大変重要なのでしっかり覚えてください。
火災予防条例は、消防法の範囲内で各市町村が定める法
少し噛み砕いて言い換えます。
火災予防条例は、消防法の中で、各市町村が消防法よりも細かく設定した法になります!!!
例を出してみましょう。
※消防法や火災予防条例の内容を噛み砕いて書きます。
それに対して火災予防条例を見てみましょう。
このように消防法の範囲内ではあるものの、各市町村により考え方が違います。
消防協議の際は、このような法体系を理解して、事前に火災予防条例を確認してから協議に臨むようにしましょう。
また、以下の消防設備業者のサイトで、消防法体系を分かりやすく図示化してくれています。
消防設備の運用基準や内規に気をつけよう
消防法の体系を理解した所で、火災予防条例関連でもう一つ覚えておくべき内容があります。
消防協議を行った方はご存じだと思いますが
どの行政にもHPなどで公にしていない「消防設備の運用基準」や「内規」というものが存在します。
そしてこの内容の厄介な所が、非公開文章でありながらも消防設備の設置において、法的に匹敵する効力を持っているのです。
内規を定める理由は色々とあるのでしょうが、例えばその市町村でこの消防設備においての事故や不具合が多数発生していることや、火災時の消火活動が円滑に進めれるように、過去事例などを踏まえて独自に設定しているなどが考えられます。
ですが、設計事務所や施工者からするとたまったもんではありません。
消防協議をきちんと進めて、消防設備の設計、工事着手の申請をしていても
担当者
内規で定めている内容があるので、それを追加してください!
なんて平気で指摘されれてしまいます。
内規で定めるのは構いませんが、それでも非公開というのは如何なものかと常々考えています。
ですが、そうは言っても消防設備の設計においては可能なら内規まで把握して、設計したいものですよね。
内規の内容によっては消防設備の納まりも、見た目も変わってきてしまい、建物設計においての影響は少なくありません。
方法はただ一つ!
消防協議の際に言いましょう!
計画している建物の消防設備に対して、内規はありませんか?
もう、それしかないのです(笑)
私は設備設計者として15年以上仕事を続けていますが、これしか方法がないと思っています。。。
消防協議に向けて事前に確認する資料
ということで消防法や内規について、理解頂いた次のステップとして、消防協議に必要な資料の準備を行います。
消防協議に必要な資料を以下にまとめてみました。
・計画地の住所の分かる地図
・議事録記入用メモ用紙
・計画内容が記載された資料(用途、面積、配置図、平面図等)
・協議内容事項リスト
協議内容事項リストは予め準備するようにしましょう。
詳しくは次の項目に書いていきます。
消防局と協議する協議内容リストの作成
協議内容リストとは一体どのようなものかと言いますと、簡単に説明しますと
計画物件に対しての、防火対象物を決定し、必要な消防設備を事前に割り出しておき、その内容と各消防設備の設置基準についてまとめた内容です。
例えこれを事前に準備せずとも、建物用途や面積などが分かる資料があれば、消防局や消防署の担当者が必要な消防設備を教えてはくれるのですが、協議の時間もかかりますし、何より建物の設計を行うのは我々設計事務所であり、消防設備については設備設計の範疇ですから、きちんと理解した上で消防協議に臨むことが好ましいです。
消防協議の手順
消防の法律の理解、消防協議に必要な資料、協議リストの内容を理解してそしてやっと本題の消防協議の手順です。
他の記事でも書いていますが、議事録を作成することは非常に重要です。
そして、このご時世ですから、消防署や消防局によってはメールでやり取り可能な行政が増えていますので、議事録を作成し、必ず担当者に確認してもらうようにしましょう。
また、消防協議において協議議事録はかなり有効な書面です。
消防の担当者も建物の設計段階で消防設備についての打合せ記録は残す行政が多く、中には公文として扱ってくれる消防署、消防局もあります。
ちなみに、協議の際は先頭あたりで説明した内規の確認は必ず行うようにしましょう!
消防設備に関する知識について
消防設備の協議について、「消防advice」は非常にオススメです。
他の記事でも何度も紹介していますが、この本は消防局、消防署の担当者も使用しているくらいで、消防設備について重要な内容を分かりやすくまとめてくれていて、法改正に合わせて作成してくれています。
また、消防設備設計にあたり、消防設備士の資格は大変重要だと考えています。
できれば設計事務所や設計会社に勤める方には一度は勉強してほしい資格です、
その理由を以下の記事で詳しく書いています。
建築士や設備設計者が消防設備士の資格を取得すると、消防設備士の知識だけでなくご自身の設計者としての価値を高める事になるので、勉強して損はないと思います。
ちなみに私は現役の設備設計者ですが、消防設備士は甲種1~4類まで取得しています。
まとめ
それではまとめに入っていきます。
消防協議の手順
1 消防の法律に関する体系を理解して、火災予防条例の内容を確認
2 消防協議に必要な資料を準備する
3 消防局、消防署の予防担当に協議のアポイント
4 協議内容は必ず議事録を作成して担当者に提出
※内規がないかの確認は必ず行うこと!
以上です。
設計事務所や設計会社の建築士や設備設計者が消防設備についての消防協議方法の解説でした。
少しでも役に立てれば嬉しいです。
より良い消防設備の設計を行うようにしましょう。
pinky
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