消火設備を設計、計画しよう

基本設計、計画

消火設備を設計するには、消防設備の種類の理解はもちろんですが、建物用途や面積に合わせた各消火設備の設置基準を理解することも必要です。
今回は設計業務の消火設備の計画に焦点を当てて、消火設備の設計手順を現役設備設計者が解説します。

この記事を読むと〇〇できます。

・消火設備のスペースの出し方、適正な配置が分かる。
・消火設備の設計手順が理解できる
・消火設備の設計に役立つ本が分かる

それでは早速解説に入っていきます。

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消火設備の計画時に検討必要な内容

冒頭でも記載しましたが、今回は設備設計業務の最初の段階である基本計画時などでの消火設備の計画を行う為の解説です。
基本計画段階で分かっている物件情報としては下記になります。

・計画地の住所や周辺の建物状況

・建物用途と大まかな面積

・各階の大まかな内部プラン

それではその基本計画時ではどのような消火設備の計画が必要なのかを下記にリスト化してみました。

基本計画時の消火設備の計画

・建物用途や面積から必要消火設備が理解できている。

・必要設備を理解した上で、設置スペースを確保する必要のある機器のサイズが分かる。

・点検やメンテナンスなどの維持管理面も考慮した消火設備機器の配置。

大きくまとめるとこの3点になります。
一見簡単そうに見えるのですが、消火設備は消防法により設置の義務がありますから、きちんと計画する必要があります。

1 建物用途を理解する

計画段階では一先ず建物用途はどの防火対象物になるのかを理解することを優先します。
下記URLの消防法施行令別表第1を参照ください。

消防法施行令別表第1 | 病院・診療所・社会福祉施設などの消防関係法令の改正について | 火災からまもるために | 医療・福祉施設向け防災システム | 施設別防災システムのご案内 | 製品・サービス | 能美防災株式会社
防災事業のパイオニア、能美防災株式会社のコーポレートサイトです。このページでは「消防法施行令別表第1」に関する情報をご覧いただけます。

飲食店や集合住宅など、その部分の用途だけであれば⑶項ロや⑸項ロなど明確に分かるのですが、
医療施設は⑹項に分類されており、その中でも診療所扱いなのか、自力避難困難な要介護者が入所する施設なのか、身障センターの分類なのかで防火対象物が変わります。

また、複数の防火対象物が入る複合施設であれば、特定防火対象物が混在している16項イなのか、防火対象物のみの複合対象物16項ロなのかで、必要な消火設備が変わります。

建物用途や防火対象物の把握は消火設備を計画・設計をする上で最も必要な手順ですので、しっかりと建物用途を理解しましょう。

2 防火対象物の面積と階数を把握する

建物用途が消防法施行令別表第1のどの防火対象物に該当するかを明確にした次の段階として、面積を確認します。
面積でも床面積や延べ面積の値により、必要な消火設備の内容が変わりますので注意が必要です。

例)
耐火構造の3階建ての床面積3000㎡のホテルの計画があるとします。
その場合、必要な消火設備としては下記になります。

各消火設備の設置基準より

・自動火災報知設備(ホテルの場合、床面積に関わらず設置必要)

・屋内消火栓(床面積2100㎡以上の為)

6000㎡は超えていないので、スプリンクラー設備は不要となります。
連結送水管も5階以上6000m2以上もしくは7階建て以上で設置必要なので、今回は不要です。


ここでのポイントして
今回はあくまで基本計画段階での消火設備で何が必要かを検討する必要があります。
上記にもリスト化していますが、必要な消火設備を理解した上で、設置スペースを広く確保する必要がある消火設備のみリストアップします。

設置スペースが広く確保する必要があるのは、消火ポンプや消火水槽、消火補給水槽などです。
消火器や自動火災報知設備の感知器がどこにどの程度必要かなど、設置面積が狭く済む消火設備はこの時点では一旦検討対象からは外しておきましょう。

建物用途や面積などから必要な消火設備を考える為の手助けとなる書籍については
各用途別に消火設備が早見表などを交えて解説しているのなるべく分かりやすい本を選ぶことをオススメします。

3 各消火設備のスペースの出し方

防火対象物が明らかになり、それに対して必要な消火設備が何かも把握できた段階でいよいよ各消火設備のスペースの出すことになります。
上記にも記載していますが、今回はあくまで基本計画段階の為、設置スペースが広く確保する必要がある設備のみピックアップして解説していきます。

計画段階で消火設備の計画が特に必要な消火設備としては以下の通りです。

・消火ポンプ設置スペースと設置場所

・消火水槽の水源水量と設置場所

・防災拠点のスペースの確認

上記に関係する消火設備を代表して解説していきます。

3-1 消火ポンプ設置スペースと設置場所

消火ポンプのスペースは屋内消火栓専用消火ポンプであれば、15~20㎡程度を四角形に近いスペースを確保しておけば問題ありません。
スプリンクラー設備と兼用の場合でも同様程度のスペースとして良いでしょう。

ただし、駐車場や危険物の建物用途の際の場合で固定式消火設備が必要で泡消火設備を選択した場合、泡消火設備用の消火ポンプ及び泡消火剤生成用のタンクが必要となりますので、ご注意ください。

また、設置場所については安易に点検やメンテナンスの維持管理面だけの観点で、地上階や地階に設置としてしまうと、、、

消火ポンプの搬入動線を考えるのを忘れていた!!

これじゃポンプの入れ替えができない。。。

建物が高すぎて最上階まで水圧が足りない。。。

そのような事がしばしば起こってしまいます。

特に連結送水管などは最上階などの末端で1MPaの水圧が確保できれば良いのですが、それすらも足りない時は、途中のフロアに多段ポンプ及び水槽が必要になるケースもあります。

必要な消火設備のポンプまで割り出せたら、次は適正な配置ができるようになりましょう。

3-2 消火水槽の水源水量と設置場所

消火水槽の水源容量は屋内消火栓で各階1台設置の場合、水源水量は2.6m3必要ですが、屋内消火栓の設置基準の包含距離25mで建物全体が包含できる場合は不要ですが、計画段階で結構ギリギリであれば各階2個設置として水源の余裕を見ておく必要があります。

このように消火水槽の水量は最悪の場合を考えて少し大きめに計画しておき、建物詳細が決定した段階で実際に必要な水量を算定する方法をオススメします。

例)

屋内消火栓の水源
2.6m3 × 各階2個 = 5.2m3の水源水量とします。

スプリンクラー設備の水源
1.6m3 × 最大ヘッド個数 = で算定

泡消火設備
最大の放射区域や配管充填量も最大とみなして算定

また、消火ポンプ同様に消火水槽の設置位置についても維持管理、搬入出計画、最小設備として可能な設置位置となるように多角的に検討する必要があります。

消火水槽のメンテナンススペースは、給水設備の受水槽のように法的な離隔距離や基準はありませんが、一つ注意です。
各市町村の消防局が定めている火災予防条例にメンテナンススペースの確保を義務付けている地域もありますので、併せて確認するようにしましょう。

3-3 防災拠点のスペースの確認

最後に防災拠点のスペースの確認ですが、商業施設や事務所では防災センターと言われる建物管理会社が運営する拠点があり、そこに自動火災報知設備の盤や警報盤などが設置されていますが

その防災拠点の場所とスペースの確認です。
防災拠点に設置する設備機器を簡単に割り出すことと、消火設備で必要な盤関係を洗いだしましょう。
自動火災報知設備が設置している建物は受信機が設置されるでしょうし、面積が大きければ総合操作盤の設置が必要になります。

防災拠点があまりにも狭い場合は、建築の設計者と相談してスペースを確保するようにしましょう。
また防災拠点は消防隊員が火災時に、建物内のいち早く辿り着く必要のある場所でもあるので、各市町村の消防局と相談しながら、防災拠点の設置場所を検討するようにしましょう。

また、「消防advice」という本は消防局の予防担当の方も愛用されている程でオススメです。
(消防にて協議をしていると担当者が付せんをつけまくったこの本を出してくることが良くあります)

今回はこれで以上となります。

消火設備の計画、設計は非常に重要だということをご理解頂けると幸いです。

しっかり勉強して、良い設備設計者であり、良い建物を設計しましょう。

pinky

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