建設業界でない方は馴染みがない言葉ですが、工事監理者とはどういった立ち位置なのでしょうか?
また、建築、建設業界には様々な「カンリ」者がいます。
設計監理、工事監理、監理技術者、施工管理
もっと言えば事業者の品質管理、設計監理の品質管理、管理建築士、、、
このように「カンリ」者が沢山おられます。
今回は設備の設計監理・工事監理者の業務を主体に、有効な資格や年収、そして自身の経験を踏まえて記事を書いていきます。
・建築業界の監理と管理の違いが分かる。
・設備の設計監理、工事監理の業務が分かる。
・設備の監理に有効な資格が分かる。
・設備の監理業務の年収が分かる。
まず初めに自己紹介をさせてください。
現役で設備設計の仕事をしているpinkyと申します。
私の業務は、設備設計業務と今回の記事のお題である設備の設計監理、工事監理両方の業務を行なっています。
設備設計の就職を目指している方
設備の設計、監理業務に興味をお持ちの方
設備の設計監理者として悩んでいる方
今回の記事が、少しでもお役に立てれば幸いです。
工事監理(=設計監理)と施工管理の違い
先ずは分かりやすい「カンリ」者の区別、工事監理と施工管理の違いです。
工事監理と設計監理は同じ立場だと考えて頂いて結構です。

設計監理というのは、単に設計者が工事監理をそのまま兼務することがあり、その場合に設計監理などと表現される場合があります。
設計監理という立場上、設計者として設計図を作成する人が工事監理にそのまま就くと、設計内容が頭に入っている状態ですので、工事監理もし易いのですが
もちろん、設計者と工事監理者が全く違う人が就任されることもあります。
公共建物の工事では特に、設計者と工事監理者が違うことが多いですよね。
それでは、改めて工事監理と施工管理の違いを解説していきます。

施工管理とは
施工管理という言葉は馴染み深いと思いますが、工事工程、工事費用、施工図の作成、各工事の工事現場の施工状況管理の他、工事に関する打合せの開催など工事に関係する全般を管理する役割にあるのが施工管理です。
つまり施工業者が施工管理を行う必要があるので、現場監督として選ばれた方のことを施工管理者と言います。
設備に関係する施工管理者は以下のようになります。
管工事・機械設備工事の施工管理者
=給排水衛生設備、空調、換気設備、ガス設備工事を担う現場監督
電気設備工事の施工管理者
=受変電設備、電灯動力、通信設備等工事を担う現場監督
設備の施工管理者は、機械設備と電気設備それぞれに就くこともあれば、両方を兼務することもあり、各機械設備工事業者や電気設備業者など専門工事業者と調整して取りまとめます。
工事監理(=設計監理)とは
工事監理及び設計監理とは施工管理とは似たような立場なのですが、大きな違いは建築士が担うことが多く、施工管理者が管理する内容を更に、設計図や打合せ通りに事業が進行しているを確認し、事業者へ報告をする立場にあります。
言わば施工管理者とダブルチェックする立場のような存在でありながら、管理内容を更に事業内容として監督するのです。
設備工事監理者もまた施工管理者と同様に、電気設備と機械設備それぞれもしくは両方を兼務します。
工事監理者とは端的に言うと
建築士としての目線で、設計図通りにかつ法的、事業計画通りに工事が施工されているかを確認する立場の事です。
工事というのは、建物規模によっては数千人、数万人の人が動き、数千万、数億はたまた数兆円のお金が動く事業です。

一つのミスで大事故や莫大な金銭的損失が発生することがあり、とても繊細な事業ですから
施工会社の管理体制と建築士による監督体制の両方で工事を進めていくことは、至極真っ当なお話だと考えられます。
設備工事の工事監理(=設計監理)の業務
監理者というのをざっと前の項目で解説した所で、今度は機械設備、電気設備工事の工事監理者としての業務内容についてです。
機械設備、電気設備工事は監理者が兼務すことが非常に多いので、今回は機械設備と電気設備両方を設備工事の工事監理者という名目の元解説していきます。
工事監理、設計監理としての業務については国交省HPの「工事監理ガイドライン(別紙)」に記載されている監理項目が非常に分かりやすいです。
国交省HPのURLは以下になります。
建築:工事監理ガイドラインの策定について – 国土交通省 (mlit.go.jp)
監理項目としては国交省HP記載の内容になりますが、
実際、工事監理者の業務は多岐に渡ります。
実際の業務内容を以下のようにまとめました。
・書類のチェック
・施工図のチェック
・変更内容の整理とコスト調整
・工程チェック
・現場施工状況の確認と検査
次の項目から一つずつ解説していきます。
書類のチェック
施工者、施工管理の方から提出される施工計画書や施工管理体制表、使用する設備機器の仕様書が事業内容として適正かのチェックを行います。
また、検査関係や竣工書類としての保存図書のチェックも必要になります。
検査関係の書類は設備的に風量が適正か、絶縁抵抗値が規定通りかなど数値的にもきちんと確認する必要があります。
工事に関係する書類のチェックはとても重要です。
ざーっと飛ばし読みしがちなのですが、設計図通りの機器か施工方法が適正かなどをきちんと確認しておかないと、いざ工事完了して間違えた事が発覚してしまうと、施工者はもちろんですが、工事監理者に対しても責任の一端があることになります。
何より、要望など理由なしにチェックミスなだけで間違えてしまうと事業内容を創る、工事監理を請け負う側目線では悲しいと思いませんか?
書類はしっかりチェックするようにしましょう。
施工図のチェック

こちらは当然の業務ですが、施工者が作成した施工図の確認業務です。
設備工事に関係する施工図は梁や壁、床貫通スリーブ図面から、天井プロット、部分的に詳細図などがありますが
設計図通りの施工図となっているか、変更されている内容の確認や法的、事業的目線でもチェックを行います。
施工図はA1用紙でも提出が多いですが、最近はデータでやり取りして、データ上にチェック事項を記載して、施工者に返すケースもあります。

設備施工図といっても、デザインに関係する納まりは意匠担当へ、構造関連は構造担当者への意見を聞くようにしましょう。
私も工事監理の業務を行うことがありますが、1番大事にしていることは施工図=実物です。
当たり前のことかもしれませんが、機械設備、電気設備では納まりはもちろんのことですが
騒音問題、臭気、機器のメンテナンスルート、漏水漏洩自己、設備機器の経年劣化問題、システムの不具合など様々なトラブル原因になります。
それを防ぐ為にも、施工図=実物という強い認識を持って施工図チェックをするようにしています。

工事の工程チェック

工事工程は基本的に施工者が管理し、定期的な会議により報告されますが、その工程が事業計画として適正なのか確認を行います。

この工程どおりだと施工図や書類のチェックはいつになるか。

行政検査から逆算して検査範囲まで工事が完了している工程なのか。

試運転、自主検査などの検査までに間に合う工事工程なのか。
工事監理業務としての工程チェックは
施工者目線でなく、より事業計画に近いかつ、その分野のプロいわば機械設備、電気設備のスペシャリストとしての目線が必要になる為、最優先で把握すべきです。
変更内容の整理とコスト調整
工事監理者は基本的に設計図通りに施工されているかの確認が主となりますが、事業者からの要望や追加行政指導、設計図面の不整合などにより変更があった場合はきちんと管理する必要があります。
変更に対してコスト面も査定を行う場合もあるので、変更点は一覧表にして竣工まで入念に管理するようにしましょう。
若い頃、コストの整理など設計監理、工事監理者の仕事ではないと勝手に思い込んでいた私は
竣工間際に事業者がコストアップについての精査した所
「報告を受けていない事ばかりだ!
あなたの会社と工事監理業務の契約の際に交わした内容に、変更点の整理、コスト増について事業者に報告する立場である事が明記されているのに、何故報告しなかったのだ!」
などと会社に怒鳴り込まれることもありましたので、皆様気を付けましょう・・・・
建設業界はとてつもなく大きなお金が動く事業です。
身を引き締めて、業務を取り組むようにしましょう。
現場施工状況の確認と検査
工事監理者は現場で書類、工程、施工図、設計図からの変更点をきちんと理解した上で、適正な施工方法を行なっているか、施工管理方法が適正かを確認します。
機械設備、電気設備の工事監理者の業務で言えば
配線配管の支持方法、ピッチは施工要領通りか、貫通させてはいけない箇所を通したルートになっていないか、機器の設置方法はメーカー推奨方法かなど多岐に渡ります。
逆に書類、工程、施工図、変更点などを理解していない上で現場の施工状況を確認、検査しても全く意味がありません。
常に頭を使いながら、5感をフル活用して現場を確認、検査するようにしましょう。
設備工事の工事監理者の年収
前述しましたが、設備監理者は設備設計者がそのまま監理者も兼務する事が多い事がほとんどです。
監理業務だけの年収としてはデータがありませんが、設備設計者の年収とほぼ同等と考えられます。
平均年収は450万円、月給換算で38万円と推測できます。
設備設計者の年収例を下記の記事に記載していますので、合わせてご確認ください。
機械設備、電気設備の工事監理に役立つ資格
前の項目までお読み頂いた方は、工事監理(設計監理)と施工管理は業務内容が違うことを理解されたと思いますが、この項目の資格面で言いますと、機械設備や電気設備工事である建築設備に関わる工事で言いますと、工事監理と施工管理は似たような資格が有効です。
資格を取得して、知識と自身の評価を上げよう

工事監理という仕事の大前提は、設計図との相違を確認する仕事なので、経験の少ないうちはあまり評価されにくいと考えられがちですが、実際はそうではありません。
工事監理という立場は、建設現場ないし建設業界には非常に重要な役割を担っていると私は考えています。
その立場を確立する為、資格を取得する為の勉強、そして保有資格を増やす事はご自身の価値を高めることに繋がり、結果的に年収UPや昇格などが期待できます。
先ずは施工管理技士
工事監理者であったとしても、やはり有効な資格は一先ずは施工管理技士であると言えます。
施工管理についての基礎知識、工程管理、関係する法的知識も身につけることができる為、非常に有効です。
給排水衛生設備や空気調和設備である機械設備は1級管工事施工管理技士
電気設備工事は1級電気工事施工管理技士を目指すことが非常におすすめです。
実務経験が少ない方向けの資格
工事監理には施工管理技士がオススメですと、申し上げましたが
施工管理技士は近年、実務経験の必要年数や経験内容が非常に厳しくなっています。
そうなると、実務経験の少ない方はすぐに取得が難しいことになってしまいます。
その際は
機械設備工事専門なら
必要な実務経験が比較的短い「空調衛生工学会の設備士」を取得するようにしましょう。
もしくは2級管工事施工管理技士を目指し、実務経験を積んでから1級管工事施工管理技士でしょうか。
電気設備工事専門なら
実務経験が少ない資格が非常に少ない為
2級電気工事施工管理技士取得を目指しましょう。
電気主任技術者3種は実務経験が不要ですが、難関資格な為、経験の少ない方のいきなりの受験はあまりオススメできません。。。
消防設備士はオススメです
機械設備にしても、電機設備にしても両方とも消防設備についての知識は必要です。
工事監理は設計図との相違を確認する業務ですので、設計図の意図を理解できないと務まりません。
そういった意味では消防設備士を取得する為に、勉強する事は非常に需要です。
また、消防設備士は比較的容易に取得が期待できる為、日々の忙しい工事監理業務にあたりながら勉強するには丁度良い資格ではないでしょうか。
まとめ
工事監理(=設計監理)
建築士としての目線で、設計図通りにかつ法的、事業計画通りに工事が施工されているかを確認する立場の事です。
施工管理は、実際に工事をされる方々の監督的立場であり、安全面、施工面、工程面など工事に関わる全ての業務を監督する立場の事です。
工事監理の業務内容
設計図通りに工事がなされているかの業務が主ですが、実際の業務内容として
工事に関係する書類、施工図、工程、変更点やコスト、施工状況の検査実施など多岐に渡ります。
設備工事での工事監理者の年収
設備設計者と同等として考えるなら平均年収は457万円、月給換算で38万円と推測
設備工事に関わる工事監理に有効な資格
施工管理技士取得が最優先です。
その他に、機械設備工事なら空気調和衛生工学会の設備士などが挙げられ
電気設備、機械設備どちらでも消防設備士を取得することは非常にオススメです。
資格を取得して、年収とご自身の価値を高めていきましょう。
事業者も、設計者も、施工管理者も人間ですから、どうしても間違いはあります。
管工事、電気工事の設備工事で言いますと
制御システム上重大なミスがあった。
換気量が足らず居室からの音鳴りが激しくなってしまった。
竣工間際の行政指導により、工事の出戻りが発生して、引き渡しが遅れてしまった。
建物の工事では、設備目線でも一つの見落としが重大な事故につながるケースが少なくありません。
そうならない為、事業を確実に進める為、工事監理者という立場は非常に大事なのです。
設備設計者の設計監理主体の1日を別の記事にて書いています。
実際にどのような1日になるのか、設備設計や設備の設計監理の業務時間なども参考になりますので是非読んでみてください。
それでは今回はこの辺りで終わりたいと思います。
誇りを持って誠心誠意業務にあたりましょう!
pinky
コメント