【現役設備設計者が解説】給水設備を計画しよう

基本設計、計画

こんにちは。
設備設計を行っている現役の設備設計者のpinkyと申します。
今回は給排水衛生設備の給水設備設計の計画についての記事を書いて行きます。


早速ですが、基本設計時の体験談を元にした会話からスタートします。


〜基本計画時〜

お客さんから建物のプレゼン資料を作ってくれって言われたけど設給水備のスペースってどうやって出せばいいの?

最初からそんなの分からないし適当に出せば良いんじゃないかな?

そうだよね、分からないしまだ基本計画資料だから僕が適当に給水設備の計画をしておくね。

設計当初の基本計画時でも設備設計におけるスペースは
適当に出してはいけません!
事業者に対して、プレゼン資料つまり基本計画段階で設備スペースを見込んだプランを提案できなければ、それはただの絵に描いた餅状態の資料です。
きちんと設備スペースを考えて基本計画資料を作っていきましょう。

ということで、今回は給水設備の計画について現役設備設計者の私が解説していきます。

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設備スペース出しを行う理由

前述しましたが、基本計画段階のプレゼン資料であったとしても設備スペースをきちんと出すことは必要です。

理由は簡単です、基本計画段階で設備スペースにより様々な所で内容が変わります。
それがこちらです。

・建物デザイン及びプラン
・建築面積、床面積
・概算見積もり金額
・事業者への説明

当たり前の話ですが設備スペースを適当に出しておいて、厳密に計算してから大きくなってしまうと、その分想定していなかった設備スペースを確保する必要があるので、当然デザインやプランが変わってしまいます。

このデザインでどうですか?
と客先へ提案しているにも関わらず、厳密に計算したらこんなことになりました。
なんてことは通じませんよね。

また、設備機器によって建築面積、床面積の対象となりますので、基本計画とは言え大幅にブレてしまうと後々建築面積、床面積が足りない!
なんて意匠設計者が泣くことになります。

更に、事業者が基本計画での概算金額を把握しておきたいとなった時に設備内容が大幅に変わってしまうと、それは最早概算金額とは言えなくなります。

建物の設計は意匠と構造と設備設計者が連携して初めて成り立ちます。
そこに設備設計者である自分たちが手を抜いてしまうことが良くないことは明白ですよね。

給水設備の計画手順

それでは早速給水設備計画の作業に入りましょう。
手順を解説していきますので、今度仕事が入った時に手順通りに進めてみてください。

給水設備の計画に必要な資料を準備

基本計画の元となる、建築の建物用途、面積、建物のボリューム、建物計画地が分かる資料を入手してから作業開始です。

更に、建物計画地周辺の上水インフラ情報として各市町村で入手できる水道台帳や閲覧用水道管管理図など水道本管の位置や口径、深さが分かる資料があれば尚良いです。

建物用途の確認

給水設備の計画に必要な資料を準備できたところで、今後は建築の建物用途を確認します。

建築の建物用途としては
ホテル、医療施設、商業施設、ビル、集合住宅、複合用途、工場等があります。

建物用途によって、直結増圧方式(ブースターポンプ方式)で良いか、受水槽を設置する加圧給水方式が必須となるか別れますので、先ずは建物用途の確認です。

例えば
入院や宿泊が可能な医療施設であれば受水槽設置の加圧給水方式、集合住宅の戸数によって直結増圧とできるかなどが考えられます。

事業計画の確認

その次に、事業計画を確認します。

・建物のどこに給水が必要か?
・給水設備であるポンプや受水槽の資産区分が発生するか?
・事業者要望事項はあるか?

給水設備であるポンプや受水槽の資産区分に関して例を挙げるなら

オフィスとテナントが混在する複合用途の建物に対して、事業計画によりオフィスとテナント別々に受水槽を設置して、給水設備も完全に資産区分を明確にしたい、などの要望がある可能性がありますので、事業計画を確認することは必要です。

市町村の給水装置施工基準を確認

各市町村の水道局などが定めている給水設備の基準資料となる「給水装置施工基準」を確認します。

この「給水装置施工基準」は特に注意が必要で、各市町村によって水道本管の口径や流量、水道施設が異なりますので当然給水の考え方がそれぞれ違います。
何に注意が必要かというのを例に挙げてみます。

・○○市は水圧が高いので5階まで直圧給水が可能です!
・逆に○○市は水圧が低いので2階建ての建物までしか
 直圧方式では給水できません。
・計画地の使用水量が○○m3/hの場合、受水槽の設置が
 必要です。
・計画地への給水引き込み口径が○○A以上になれば
 受水槽の設置が必要です。
・直結増圧方式の場合、水道本管口径の2サイズダウンした
 口径でないと引き込むことはできません。

給水設備を計画する上で、各市町村の特徴を把握することは大変重要です。
給水装置施工基準は長ったらしい文章ですが、きちんと確認しましょう。
もし内容が分かりにくい場合は、水道局窓口へ直接問い合わせて確認しましょう。

給水方式の確定

建物計画の使用水量
建物計画地周辺の水道本管の状況
市町村の給水装置施工基準

これからを整理して、準拠する形で給水方式が確定できます。
例を出して解説していきます。

<条件>
建物用途:6階建ての事務所ビル
建物内瞬時最大給水量:300L/min
想定給水管引き込み口径:50A
水道本管口径:150A
給水装置施工基準記載内容
・直圧方式は3階まで可能
・直結増圧方式は水道本管口径の2サイズダウンまで
 建物への給水管引き込み口径が75以上の場合は受水槽の設置が必要
瞬時最大給水量500L/minまでは直結増圧方式が可能

給水設備の計画では、医療施設やホテルなど必要でない限り、先ずは直結増圧方式が可能かどうかを見定めます。

理由は簡単
受水槽方式よりも直結増圧方式の方がスペースも狭く、維持管理面も楽だからです。

▼直結増圧方式
スペース:ポンプやポンプユニットのみのスペースだけ考えれば良い
維持管理:ポンプの定期的な点検、交換で済む

▼受水槽設置の加圧給水方式
スペース:受水槽+ポンプスペースが必要
維持管理:受水槽の清掃、水質管理で維持管理費用が発生、
     更にポンプの点検も必要

<給水方式>
上記の条件より
・建物が6階建ての為、直結増圧方式もしくは受水槽設置の加圧給水方式のどちらか
・引き込み口径は50Aなので水道本管に対して3サイズダウン
・その為給水装置施工基準の条件考慮

上記により、給水方式は
直結増圧方式を採用となります。

これで給水設備の計画としては8割ほど完了したことになります。
それでは次回よりスペース検討を行っていきます。

給水ポンプの種類やサイズ

給水ポンプは、直結増圧方式の際によく採用されるポンプや制御盤が一体となったポンプユニットや、受水槽設置の際の加圧ポンプ方式の際の3台、4台ローテーション運転などがあります。

スペースとして圧倒的に小さく済むのは、当然ポンプユニットタイプです。

スペース出しも使用水量と大まかな揚程さえ分かればカタログで選んだ簡単にスペースを出すことが可能です。

Kawamoto pump Digital showroom

受水槽設置の際の加圧給水ポンプは、どうしても使用水量が大きく3台、4台ローテーションの能力が必要になりますので、その際はポンプ+制御盤のスペースを見込む必要があり、ポンプユニットに比べると大きくスペースを確保する必要があります。

ポンプ本体のスペースが大まかに出せると、あとはポンプを設置する場所が屋外なのか、屋内かによってポンプスペースが変わります。

▼屋外の場合
ポンプ本体+αで配管取り回しがあるので一回り大きめにに確保します。

▼屋内の場合
ポンプ室になることが多いので
ポンプ本体、配管スペース、換気設備スペースを考慮した大きさとしましょう。

受水槽の容量やサイズ

受水槽設置の加圧給水ポンプ方式の場合、受水槽の容量を算定してスペースを確保する必要があります。

受水槽の算定容量は、先ずは各市町村の給水施工基準を確認して、1日の使用水量を求めましょう。
給水施工基準の中にこういった表があります。

上記資料を基に、受水槽の有効容量を求めましょう。公式は下記になります。

受水槽の有効容量(ℓ)=(0.4〜0.6)×1日当たりの使用水量(ℓ/日)

水は1000ℓ=m3なので、m3に単位変換するとそれが受水槽の有効容量です。

※余談ですが1日の使用水量に0.4〜0.6掛けるのは、1日の使用水量の半分くらい受水槽で貯水しておけば、どれだけ同時使用しても水不足になることはまずないですよ、という観点からの計算式です。

受水槽の有効容量が算出できたら、次はいよいよスペース出しです。

受水槽は水道法により、メンテナンススペースの確保が義務づけられていて、
受水槽のメンテナンススペースは周囲と下部に0.6m、上部1mが必要になります。

例を出します。

<条件>
受水槽有効水量:60m3
受水槽の高さ:2.5m

<受水槽のスペース算定>
受水槽の高さ2.5m→水位-0.5mと仮定して有効水量の水位を2mとする。

60m3÷2m=30を任意の幅、奥行きで割り出します。
30÷幅5m=6m(奥行き)となりますので、
受水槽サイズとしては幅6m、奥行き5m、高さ2.5mとなります。

更に受水槽のメンテナンススペース、基礎や架台を加えると
幅(6+0.6+0.6)、奥行き(5+0.6+0.6)、高さ(基礎0.5+架台0.15+2.5+上部メンテナンス1)
=幅7.2m、奥行き6.2m、高さ4.15m

これが受水槽の有効容量から算定する受水槽のスペースです。

更に加圧ポンプスペースとして幅4m×奥行き3m程見たスペースが受水槽設置の加圧給水方式のスペースとなります。

まとめ

<給水設備の計画>

・設計当初の給水設備計画は全体に大きな影響が出るのでしっかり検討して

 スペースを確保することが大事というのを念頭に置くことが大切。

・給水設備の計画を行う前に、必要な資料を集めましょう。

・建物用途、事業家計画を理解しましょう。

・小スペースで済む直結増圧方式を最優先に考えましょう。

・受水槽方式はメンテナンススペースも考慮したスペースとしましょう。

いかがでしょうか。
給水設備の計画は色々な条件を頭だけで考えてしまうとややこしくなるので、一先ず手順通りに実際の計画内容を落とし込み、問題点を整理しながら計画していくことが大切です。

設備設計者は基本計画時にきちんと給水設備の計画ができるようになりましょう。

それでは以上となります。
楽しくきちんと設備設計をしましょう!

pinky

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